2008年5月のニュースレター:[以前のニュースレター]
 
 
5月26日(月)
 
 
■国会は55年体制よりも機能していない
 5月も今週で終わり、鬱陶しい梅雨の季節を迎える。国会のほうも、政府与党側はさっさと会期内で終わろうとしており、まことに緊張感を欠いた政局になりつつある。というのも、支持率が10%台と低迷する福田内閣を、自民党は変えようとしていないどころか、奇妙な団結が見られるのだ。つまり、解散させないという点で一致しており、誰も次の総理大臣という大役を引き受けようとする気概に欠けているのだ。ねじれ国会の中で、与野党の協議に向けたルールがまったくできておらず、又、それを作ろうとする意欲もかけているように見える。これでは、55年体制よりも国会の機能という点では、悪くなっているといわざるを得ない。
 この政局を切り開いていくためには、民主党ががんばるしかない。国会の終盤に向けて後期高齢者医療保険制度の廃止法案を参議院に提出し、この問題に対する徹底した追及を進めることになっている。野党を取りまとめるために、とりあえず廃止し、元の老人保険制度に戻すこととしているが、本来は高齢者を既存の医療保険制度に取り込んで相互調整する方式に転換していくべきだと思う。是非とも、今後の改革にむけて、いっそうの努力をすべきだ。

■日本は小さい社会保障の政府、それをもっと小さくする愚劣さ
 問題の背景には、小泉改革のもとで進められた市場原理主義に基づく改革によって、社会保障財源に対する徹底的な削減が強力に推進されたことである。2011年、国の財政をプライマリーバランスで黒字化するために、毎年国費ベースで2,200億円ずつ削減していくことが2006年の骨太方針で決められ、すでに3年目に入ろうとしている。これまで、生活保護の改悪や障害者の支援費の切り下げなど、国民の生活権を無視して強行されてきたのだ。医療保険制度の改悪も、この延長線の上に出てきていることを見失ってはならない。このまま行けば、財政再建のために、国民の大切な皆保険制度が崩壊させられてしまうわけで、さすがに山口2区の補欠選挙の結果をみて、このままでは次の総選挙で敗北することに危機感を抱いた自民党幹部は、2006年に決めた骨太方針を変えようといい始めている。
 ここで思い出されるのは、この方針を決めるときの経済財政諮問会議での小泉元首相の発言である。正確な発言は記憶していないのだか、徹底的な社会保障の削減をはじめ財政の切込みが進めば、増税をしても良いから削減しないでくれ、という声が出てくるはずだ。それまでは、改革を進めていく必要がある、といった趣旨であった。なかなかしたたかな発想だと思うところもあるのだが、一度制度が崩されてしまうと元に戻すことが難しくなる。日本の教育制度、とりわけ公的教育制度の崩壊が進められ、元に戻すことができにくくなっている。医療保険制度についても、いつでも・誰でも・どこでも保険証一つあればかかれるという世界に冠たる制度が、今音を立てて壊れ始めつつあるのではないだろうか。まさに、今こそ負担増をしてでも、いや、負担増をしながら国民生活の基本をなしている教育・医療・介護・生活保護などを充実していくために全力をあげていくべきなのだ。
 自民党の上げ潮路線をとっている方たちを擁護している学者・専門家の中で、財政再建は「財政カット7割、負担増3割で進めると成功する」という黄金律があると、のたまわっている方たちがいる。そんな「迷言」にだまされることなく、今こそ崩れかかっている日本の社会保障制度の改革に力を入れるべきときなのだ。しょせん自民党内での「上げ潮派」と「財政再見派」の対立ではなく、正々堂々と政権交代を通じて改革をしていかなければならない。出番は民主党なのだ。

■民主党も財源問題についての明確な姿勢を明確に
 その民主党であるが、次の総選挙こそがまさに政権交代をかけた一大決戦となることは間違いない。道路特定財源問題で党内の不一致が心配されたものの、結果的には大きな亀裂を生むことなく終わったし、日銀総裁人事でも、一時、幹事長と代表との対応方針の相違が心配されたものの、とりあえずは統一対応をとることに成功した。では、問題はないのだろうか。この間、一番の問題は民主党の政策において、財源問題がネックになりつつある。つまり、参議院選挙でのマニフェストで15.3兆円の財政削減に加えて道路特定財源のガソリン税など2.6兆円の財源をどのように捻出するのか、無駄を省いて捻出するにはあまりにも巨額でありすぎるのだ。日本の将来社会を考えたとき、小さな政府ではなく、国民が安心と信頼を勝ち取れる政府にしていく必要があると思う。そのために、国民に向かって必要な負担増を求めていくべきであり、どんな負担を求めるのか、しっかりと打ち出していく必要があろう。







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5月19日(月)
 
 
■会期延長せず、36計逃げるが勝ち、か
 道路特定財源問題が一件落着したため、次の対決課題は後期高齢者医療制度の見直し問題に移りつつある。来年は、基礎年金の国庫負担について、現行の3分の1から2分の1へと引き上げをすることになっているし、介護保険の改悪も画策されている。まさに、社会保障制度の改悪の弊害が、誰の目にも明らかになりつつある。もともと、家族や企業に依存した小さな社会保障政府しか持たなかった日本が、さらに社会保障予算を削減しようとした小泉・竹中路線によって、限界に直面しつつある。自民党内の有力議員ですら、このまま2011年まで毎年2200億円もの社会保障財源の削減を続けることには反対だ、と主張する状況である。経済財政諮問会議で今年の「骨太方針」にどのような内容が盛り込まれるのか、道路特定財源の一般財源化だけでなく、社会保障分野も大いに注目しなければならない。
 国会は6月15日に会期末を迎える。政府与党側からは、会期延長はしない、という声が聞こえてくる。国会を延長しても、福田内閣の支持率を挽回することは難しく、ここでサミットを挟んで秋の臨時国会に向けて態勢を立て直そう、ということなのだろう。報道によれば、60日ルールを定着させて重要法案を通していくため、秋の臨時国会を早ければ8月末にも開始したいとの事、その前に内閣改造でも進めるのかもしれない。なかなか解散総選挙には打って出ようとしない。それもそのはず、内閣支持率は10%台に落ち込み、政党支持率でも、最近ではNHKの政党支持率調査でも民主党が自民党を上回ったと報道されている。まさに、政府自民党側からすれば、今解散・総選挙を実施すれば「大敗北」を喫するだけでしかない。おそらく、来年秋の任期満了まで何とか持ちこたえたいというのが、本音のところであろう。

■難問を解決できる政権が確立できるのか
 さて、それで今後の福田政権、いや自民党政権はどのようになっていくのだろうか。人気の出ない福田総理に替えて、あっと驚く人材を総理大臣に選出するという奇手ももちろんあるのだが、何せ抱えている難問を実現できる可能性があるのだろうか。後期高齢者医療制度や基礎年金の税金投入を2分の1に引き上げることや、道路特定財源の一般財源化に向けての道路族議員の抵抗を排除したり、消費税の引き上げを含めた抜本的税制改革を実現しうる力を持ちうるだろうか。今の与野党の状況からすれば、その展望はまことに暗いといわざるを得ない。誰がなっても、国民に大きな負担を求めざるを得ない課題だけに、先送りを決め込む可能性が大きい。

■「民主党への共同提言」、所詮「大連立」への期待だけか
 そうしたなか、『文芸春秋』6月号に自民党内で総理大臣候補とうわさされている麻生太郎氏と与謝野馨氏が「日本よ、『大きな政治』にかえれ」と題する対談を掲載され、そのなかで『民主党よ、現実に帰ろう』と「共同提言」が掲載されている。今をときめく御両名であり、与謝野氏は、最近出された『堂々たる政治』のなかで堅実な提言を出されており、自民党の中では最も信頼できる政治家の一人と思っていただけに、期待をして読ませていただいた。結果は残念ながらまことにお粗末なものでしかない、といわざるを得ない。というのも、提言の中で冒頭「政党政治は今瀕死の危機にある」という現状認識をなさっておられるのだが、何が問題なのか、という点になると、衆参のねじれの中で、合意を形成しようとしない民主党に対して、国民生活に密着した諸課題を中心に、政党協議の場に立ち戻れ、と呼びかけているのだ。与野党の政党協議の枠組みとして、政権の担当相と次の内閣の大臣との間で与野党が責任を持って協議してはどうか、という提言となり、国民生活に密着した課題としては、消費税を10%にして社会保障目的税とし、国民が不安感を持たないよう未来の投資とすることを提案している。要するに、昨年10月末の大連立の提案を、形を変えて与野党間で協議して進め、誰もが嫌がる消費税の引き上げを一緒にすすめようというものとしか受け止められないのだ。
 問題は、何故ねじれ状況の中で国会がうまく機能しないのか、55年体制の下で続けられてきた国体政治の延長線の下で、官僚内閣制と批判されてきた立法府と行政府のあり方に対する深刻な反省や、その反省に立った議会制度の民主的制度改革の必要性をなんら痛感されておらず、長年与党として進めてきた責任感がまったく無く、いまやマニフェストを軸とした政権交代を通じて真の議院内閣制を確立することによって、国会が国権の最高機関としての機能を回復できるし、しなければならないときにきていることへの思いもまったく欠如しているのだ。







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5月12日(月)
 
 
■弱弱しい福田総理、一刻も早い解散か、退陣を
 ゴールデンウイークが終わった5月9日、参議院財政金融委員会で道路特定財源を10年間にわたって存続させる内容を含んだ政府提出の法案が、賛成少数で否決された。その直前に、財政金融委員会と国土交通委員会の連合審査会で、福田総理大臣出席のもと総括質疑が繰り広げられ、総理自身が、来年度以降道路特定財源を廃止し一般財源化する方針を提起されてきたことと、10年にわたって続けるというこの法案の矛盾を、民主党をはじめとする野党側が、鋭く指摘したのは当然のことであった。
連合審査会を主宰する委員長席から、そのやりとりをつぶさに見る機会があったが、総理大臣の答弁の中で、野党の側からの修正の提起を待ち焦がれていた、といった趣旨の発言が出されていた。ちょうど、4月はじめに開催された党首討論での、「かわいそうなぐらい振り回されているんですよ」、という言葉と同様、総理大臣としてどのように政治生命をかけて事態を打開してきたのか疑わしいほどの弱弱しい言葉しか出てきていないのだ。
 その発言から伺われるのは、根底において野党である民主党との話し合い路線にすがり付こうとする姿勢が、なんら変わっていないということであった。話し合いを否定しているのではない。参議院で与野党が逆転したことを踏まえ、どのようにして自分の目指す国づくりを実現していくのか、そのためには、国会運営のあり方をどのように改革していくべきなのかなど、その執念がどこにも出てこないどころか、逆に民主党が何もしないから実現しない、と駄々をこねているように思えてならない。そこには、日本国総理大臣としての責任の重さを感ずることができないのだ。もはや、総理大臣をなさっていること自体が、大変な問題なのだ、といわざるを得ない。国民は、そのことを鋭く見抜いており、支持率も20%を切るところまで落ち込んでいる。一刻も早く、解散・総選挙をされるのか、それとも内閣総辞職されるのか、強く求めたい。

■新しい日米中の関係構築を
 さて、先週号で指摘した中国の胡国家主席との日中首脳会談において、懸案であった餃子やガス田、チベット問題などは、友好第一の流れの中で十分な論議がなされたといえず、結局あいまいなものでしかなかった。せっかくの機会にもかかわらず、北東アジアの将来について率直に語り合い、新しい日中関係を作っていく姿勢に乏しい、と感じたのは小生だけであっただろうか。問題は今後の日中関係のあり方であり、アメリカの覇権国家としての衰退が進みつつある今、日中米の新しい関係構築に向けて、一層の努力を進めていく必要があろう。

■問責決議より後期高齢者医療制度の問題点の解明へ
 さて、今週参議院本会議での道路特定財源法案の否決を受けて、13日には衆議院で3分の2の賛成でもって再可決される見込みである。その際、参議院で福田総理大臣に対する問責決議を求める声もあったのだが、結局見送られることになった。それよりも、評判の悪い後期高齢者医療保険制度の廃止法案を提出し、問題点を明確にするとともに新しい制度を作る方針に転換しようということになりつつある。総理大臣の問責が通っても、法的な拘束力が無く、早期に求めている解散総選挙は不利な条件の下で自民党が実施するとは到底考えられないわけで、持久戦に持ち込まれつつある。

■政界再編が簡単に進むとは思えないのだが
 このまま洞爺湖サミットを経て以降、福田総理の退陣・後継総理大臣による人気があるうちに解散・総選挙に打って出るという姿が想定される。来年度の予算や税制改革を考えるとき、9月末までに解散総選挙を終えておくとすれば、サミット以降の早い時期に臨時国会、内閣総辞職、自民党総裁選挙、新総理を選出する臨時国会という流れになろう。なかなか事態は想定どおり進まないし、最近の国民新党や平沼新党(?)さらには橋本前高知県知事や江田憲司代議士らの動き、さらに与野党入り混じっての議員連盟の活発化を見るとき、何か大きな政局の転換もありうるのかもしれない。小選挙区制の元で、それほど大きな政界再編成がおきる条件は少ないように思えるのだが、人間のやること、何がおきるかわからないのも政治なのだ。








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5月5日(月)
 
 
■労働者の生活改善は最低賃金の底上げから
 5月といえば、メーデーである。最近、メーデーに参加する労働者の数が年々減少していることが気になる。正規雇用労働者がリストラによって大きく削減されている一方で、メーデーなどに参加がしにくいパートや派遣、臨時といった非正規雇用労働者が増え続けていることの反映でもあろう。今年の春闘も、大手企業においてすら例年よりもわずかな賃上げで収束し、中小企業では賃上げどころではないというのが実態であろう。何せ、今年の春闘に際して、あの経団連ですら傘下企業に対し、条件のあるところでは賃上げを訴えたにもかかわらず、この結果なのである。やはり、最低賃金の底上げを政治主導で進める以外にないのではなかろうか。世界の先進国では。軒並み時間当たり賃金で1,000円を越しており、市場原理主義者が模範とするあのアメリカですら最近1,000円を上まわったのである。一刻も早くやらなければならない課題であろう。

■後期高齢者保険制度の廃止と抜本改革を
 メーデーのプラカードや出し物で目立ったのが、後期高齢者医療保険制度に対する批判である。ちょうど4月27日に実施された衆議院山口2区の補欠選挙の結果は、民主党公認の平岡候補が2万票以上引き離しての圧勝であった。保守王国山口でこれだけの勝利ができた背景の一つは、各種調査の結果を見ると、後期高齢者医療保険制度に対する批判がもっとも強かったといわれ、敗北の直後、福田総理は舛添厚生労働大臣を呼んで、後期高齢者医療制度の問題点を改善するよう指示をしたことが象徴的であった。
この制度については、2年前、後期高齢者保険制度の導入を自民党・公明党が強行採決で進めたことを忘れてはなるまい。高齢化社会をどのように支えていくのか、とくに必要な視点は保険者の権利を誰が代表してくれるのか、ということにあるのであり、これまでの制度では高齢者が所属していた保険制度の中でまかなわれていたことから、高齢者の権利もその中で不十分ながら代弁されていたのである。今度の制度は75歳以上の方たちで輪切りにされ、結果として誰も高齢保険者としての権利を主張できにくいものにしてしまったことにこそ一番の問題があるのだ。財政難を理由に、次々に高齢者の方たちの医療が「国民皆保険制度」の、いつでも・誰でも・どこでも医療にかかれる保証がなくなりつつある。詳細は省くが、かつて民主党が主張していた、いわゆる「突き抜け方式」に戻していくことがベストであろう。

■自民党は即時、解散・総選挙を実施すべきだ
それにしても、福田内閣の支持率の低下はとどまるところを知らない。まるで底なし沼のように低下し続けており、中には19%まで低下した調査も出てきている。前にも指摘したように、この福田総理大臣には自分のミッション=使命というものがまったく見えないわけで、いったい何のために総理大臣をなさっているのか問いただしてみたい気がする。5月6日から中国の国家主席が来日し、首脳会談が開催される。このレターが読者の皆さんに到着するときにはその会談の結果は出ているのだろうが、何せこの原稿を書いているのが5月5日朝なもので、予想する以外にない。ギョーザやガス田開発、さらにはチベット問題など日本の国益に従ってきちんとものが言えるかどうか、残念ながら多くは期待できまい。本来は、一刻も早く解散総選挙を実施すべきであるにもかかわらず、安倍政権、福田政権と政権のたらいまわしをしているに過ぎない。内閣総辞職ということになれば、小泉総理以降、3人も民意の審判を受けない総理が誕生することになる。直近の民意である昨年7月の参議院選挙の重みが、依然として失われること無く国会に反映せざるを得ないのだ。議会制度とは、しょせん有権者である国民の民意に依拠していく以外にはないのである。現行憲法は、なるほど政権選択においては衆議院の民意を優先しているものの、参議院にも国民の直接選挙という洗礼を受けた民意が堂々と存在しているのだ。その参議院が、どのように2院制の下で振舞うべきなのか、立法府である国会の本来機能を高めるべく、努力していく以外にない。今週7日には、参議院の有志で「参議院の在り方に関する勉強会」を発足させ、第1回目として駿河台大学の成田憲彦学長を呼んで勉強会を開催する。呼びかけ人のひとりとして、今日の状況の下でタイムリーなものになるよう努力していきたい。








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