2008年1月のニュースレター:[以前のニュースレター]
 
 
1月28日(月)
 
 
■福田総理の経済政策は何なのか
 世界経済は、先週号でも述べたように世界の国々が、アメリカのサブプライムローンに端を発した金融不安から、経済の不況局面への落ち込みが避けられなくなっており、FRBは0.75%も金利を引き下げたものの、市場では更なる引き下げに向かうのでは、と見込まれはじめている。株式市場も世界的な乱高下を繰り広げており、その中でも特別日本の株価の下落が大きい。福田総理は、「福田内閣の政策の欠陥が、株価を引き下げているのでは」という記者の質問に対して、「いったいそんな分析をしている専門家がいますか」と逆切れの答えに及んでいる。経済・金融に対してやや苦手なのか、まことに反応は遅く、切れ味は鈍い。
 そうした中で、石油価格の高騰問題について、何故1バーレルが100$まで高まったのか、雑誌『世界』2月号で面白い分析に出会った。つまり、石油価格を決定する大きな力を持っているOPECの中心であるサウジやアラブ首長国連合など湾岸諸国が、これまで自国通貨をアメリカのドルにペッグしていたことから転換し始め、湾岸諸国(GCC)として共通通貨圏に持ち込み、ドルだけでなくユーロなども含んだものになりつつあるのだ。そうした中、ドル安が進んでいることから、手取り収入の落ち込みを防ぐために、石油価格の高騰を受け入れているのだ。おそらく、そのあたりをにらんだ投機筋が仕掛けているものと見られているのだが、なんともドルの信認が落ち込み始めていることを痛感させられる。一人、日本だけが、忠実にドルだけを買い続けてきた歴代政府の姿を見るにつけ、アメリカの第51番目の州と揶揄されることに、怒りさえ覚えるのは小生だけではあるまい。
 さて、日本経済もようやくインフレの流れが強まり始めてきた。昨年12月の消費者物価指数の値上がりが、急ピッチに進んできている。具体的には、食料品であり石油価格の高騰が浸透し始めてきたのだ。需要が旺盛になり、その結果として物価が上がるということならいざ知らず、需要のほうは賃金が上昇するわけでもなく、原材料費の値上げをそのまま価格に転嫁するだけであり、物価上昇の姿としては良くない。依然としてGDPデフレーターはマイナスを示しており、デフレからの脱却の公約もいまだに実現できていない。これでアメリカの景気減速の影響から、輸出の落ち込み、設備投資の減少も加われば、日本経済もスタグフレーションに突入する危険性すらある。まさに福田内閣の、経済政策の舵取りが問われているのだ。先日の所信表明演説では、あまりその点に目配せできているようには思えなかったわけで、福田丸の船出は危ういものを感ずる。

■道路特定財源維持のつなぎ法案は議会制度の破壊だ
 国会のほうでは、例の道路特定財源の暫定措置問題に対して、政府・自民党のほうは、暫定税率を3ヶ月だけ延長・維持するだけの議員立法を衆議院に提出して1月中に通過させ、参議院で抵抗しても60日ルールで再可決すればよい、という戦術を取ることを視野に入れ始めている。まさに議会制度を踏みにじる姑息なやり方であり、断じて容認することはできない。先週の予算委員会で民主党の前原委員が、この点に対する福田総理の認識を問うたものの、まともに答えなかった。おそらく、ダボス会議から帰って最終的な判断を示すのであろうが、もしそれをとるのであれば、直ちに政局は内閣問責、解散・総選挙という形に展開してしまうのではなかろうか。野党との話し合いを模索しようとしている福田政権であり、決してそのような方策を採らないことを強く要望したい。

■地球温暖化対策に向けて、直ちに取り組もう
 いよいよ国会の審議は補正予算の審議から平成20年度本予算の審議へと向かう。今年は、参議院で与野党が逆転している中で、例年とは一転して道路特定財源を含んだ租税特別措置を含んだ予算関連法案が一番の注目点となる。その審議の中心は財政金融委員会であり、とくに与野党が逆転している参議院での対応が注目されることは必至である。小生が委員長を務めるだけに、その運営には最大限の配慮を取る必要があると考えており、とりわけ議会の活性化を進めながら委員会の審議を通じて国民にとって必要な修正協議は進めていくべきだと思う。特に、道路特定財源の暫定税率の引き下げ問題についても、地球温暖化対策税・環境税の導入問題など、先の前原議員だけでなく岡田克也議員や自民党の中川議員、更には社民党などもいろいろと提言されている。議会内で論議をすることの課題は多くある。経済がスタグフレーションになる危険性も考慮しながら、しっかりとした論議を必要としている。





line
1月21日(月)
 
 
■経済は先進国の景気後退と途上国経済が、デカップリングできるかどうか
 世界の経済は、アメリカのサブプライムローンのつまずき以来、どうもおかしくなり始めたようだ。アメリカの雇用統計というのは、経済の実態を見るとき大変重視される指標といわれているのだが、最新の統計で雇用の悪化が顕著に進んでいることがわかった。金融不安から実体経済の悪化が進展し始めたため、ブッシュ大統領も経済対策として15〜16兆円もの財政政策を発動するという。その中心は減税である。ただし、その出動までには議会の承認が必要となり、最短でも2〜3ヶ月かかるし、確実に議会が通過させられるとは限らないし、ニューヨーク株式市場はこの減税案に対して、よい反応を示していない。
 これに対して、金融政策のほうが即効性は高い。次のFRBの政策決定会合で、金利が最低でも0.5%下がるだろうと見込まれている。それにしても、サブプライム問題に端を発した世界経済の動きは、石油価格の高騰も加わり、下手をすれば不況とインフレの競演という最悪のスタグフレーションになりかねなくなっているのだ。今、デカップリングという言葉が経済の世界で使われ始めている。つまり、アメリカを中心にした先進国の経済と中国やインドなどの途上国の経済が連動していくのか、それとも関係なく経済が順調に拡大していくのか、という点である。日本経済が、今後どのように進展していけるのかは、この点にかかっているといっても過言ではない。

■エネルギー環境革命の進むEU、停滞する日本から脱却を
 それにしても、日本の株式市場は実体経済の落ち込みや、サブプライムの被害が少なかったにもかかわらず、大きく下落しており、福田内閣が発足して以来の下落額は2500円に達している。それだけこの内閣に対する市場の期待が低いということなのだろうか。もちろん、日本の株式市場にしめる外国人株式の割合が高いことや、持ち合い株式が少なくなったとはいえ、依然としてかなり存在していることなどが反映していることも間違いない。日本の一人当たりGDPが、先進国中18位にまで低下していることも、見逃してはならない。日本経済は、今後どのように進んでいくべきなのか、とくに環境問題での強力なリーダーシップが欠かせない中で、いよいよ国会での論戦が今週から始まる。ガソリン国会と銘打たれているのだが、むしろ環境国会として、大いに環境税を含めた環境対策を、論じていくべき時にきているのだ。イギリスでは、家庭用のエネルギーをすべて再生エネルギーや新エネルギーでまかなう方針を打ち出したという。太陽光発電の開発と製造では世界一の日本なのに、その国内での活用ではヨーロッパに遅れをとっているのは情けない話ではなかろうか。ダボスでは、小沢代表も福田首相も参加されるのであれば、環境政策について地球社会全体を展望して日本としての明確な戦略を強く打ち出してもらいたいものである。

■道路特定財源問題は環境問題を視野に入れた論議を
 今度の国会での焦点は、確かにガソリン税など道路特定財源の暫定税率の廃止問題に焦点は移ってくることはまちがいない。ただ、24円30銭も税金が下がることに対して、それでは環境問題としてみたとき、問題があるのでは、という意見が経団連の中からも出てくる状況にある。民主党としては、暫定分を除いた本則として残っている24円30銭を軸にして、地球温暖化対策税に振り替えていく必要があると主張している。24円30銭でよいのか、もっとその額を高めていくべきなのか、大いに議論をして1年間のうちに結論を出すことにしている。社民党も環境税という視点を強く打ち出しているだけに、その実現に向けてしっかりと共闘していく必要があろう。
 問題は、道路特定財源という形で、いつまでも道路だけを作り続けることが良いのかどうか、という資源配分のあり方にかかってくる。もう、道路だけを作り続けることから脱却し、必要なら道路も作るし、福祉に教育に財源を振り向けていけるよう、地方自治体のもとで決定できるようにすべきなのだ。そのことこそが、一番の狙いなのであり、ガソリン価格が高騰しているから税金分下げることによって、国民の支持を集めようというポプュリズムに依拠しているものではないのである。税制は、国の形の根幹であり、その哲学がしっかりしていなければならない。安直な議論は国の形を危うくするのだ。







line
1月15日(火)
 
 
■参議院の民意無視は許されない
 国会はいよいよ会期末を迎えた。だが、今国会の最大の焦点とされた給油新法は、11日金曜日に開催された参議院の本会議で、反対が賛成を大きく上回り否決され、直ちに衆議院に送られ、憲法の規定に基づき3分の2の多数の賛成で持って可決された。もちろん、この手続き自体には法的な問題点はなかったものの、その過程で両院協議会の開催は為されず、一番直近の民意である昨年7月に実施された参議院選挙の多数派である参議院の民意をまったく無視したことは、政治的に大問題である。もっとも、それで参議院で内閣の問責決議案を提出するかどうかは、これまた政治判断の問題になるわけで、今回は提出にいたらなかった。次の通常国会での予算関連法案に対する戦いが最大の山場になるものと見られており、参議院の財政金融委員会がその焦点になることが予測されている。どのような委員会運営を進めるべきなのか、しっかりと考えて行きたい。

■小沢代表の投票不参加は大問題だ
 それにしても、今回の衆議院の再議決の際に、民主党の小沢代表が採決直前になって退席されたことはまことに問題であった。結果はもちろん判っていたことかもしれないが、それでも反対の1票を投じることが必要なのであり、たとえ大阪府知事選挙の応援が入っていたとしても、少し時間を遅らせることも可能なのであり、理解に苦しむ。
 さらに、問題と感じたのは、野党共闘の重要性である。参議院で採決せず継続審議にしようとしたことに対して、野党共闘が崩れかけたことは問題であろう。参議院では単独過半数を持っておらず、絶えず野党の結集を国会対策として配慮していく必要がある。今臨時国会では、少なからず野党の結集という点で不安が募る場面があったことを、教訓としていくべきだと思う。
 臨時国会全体として振り返って見たとき、やはり一番の問題は10月末から11月にかけての大連立騒動であろう。参議院選挙の勝利からいよいよ衆議院の解散・総選挙に向けて、民主党が一致結束して戦おうとしていたときだけに、その戦略をまったく台無しにしてしまうことを、代表自身が主導されたことと共に、依然としてその考え方自身を今でも正しいと新聞紙上で表明されていることに対して、不信の念を持たざるを得ないのだ。16日に開催される民主党の党大会で、どんな論議が展開されるのか注目したい。

■求められる「熟議の民主主義」
 それと同時に、民間政治臨調の方たちが提起している「熟議の民主主義」の実現という課題にきちんと答えていく必要がある。大連立であるとか、あるいは3分の2条項を使って、力づくで法律を通していくというやり方は、まことに拙劣なやりかたなのであり、議会人として技を競い合わなければならない時代になっている。というよりも、本来の民主主義であれば、当然のこととしてきちんと議会が民意を正しく反映できるよう機能していなければならないのに,55年体制の下で政権交代がほとんどなされない中で、議会がまったく機能していなかったツケが、今われわれ議会人に問われているのだ。通常国会では、真剣に議会のあり方について知恵を出し合っていく必要がある。

■世界経済から目が離せない
 さて、政治の世界から経済に目を転じてみるとき、明らかに変調をきたし始めていることを感ずる。アメリカのニューヨーク株式市場の下落とともに、石油や金価格の急騰が進展し始めており、サブプライム問題に端を発した金融不安が世界経済を覆い始めている。そうした中で、日本の株式市場の下落率はアメリカを大きく上回っており、市場は日本経済の先行きに対して警戒感を強めているのだ。アメリカと共に世界経済のけん引役となった中国経済も、株式市場がバブルの状況を呈しており、いつ弾けてもおかしくない状況という。1バーレル100$を越す価格が常態化すれば、世界経済に大きな影響を及ぼすことは必至であろう。ここ当分世界経済の動向から目を離すことはできない。
 こうした内外情勢の中で、福田総理大臣の戦略方針がまったく見えない。それゆえに、内閣支持率が低下しており、今後の展開次第では危機的ラインといわれる30%台に低下することも予測される。18日に予定されている所信表明演説の中身が注目される。と同時に、今年はサミット開催国としてどんな方針を持って臨むのか、ダボス会議での政策提起も注目される。できれば、小沢代表もダボス会議に出席して、民主党の世界戦略をきちんと提起すべきではなかろうか。期待したい。





line
1月7日(月)
 
 
■世界の金融危機が日本に押し寄せてきた
 いよいよ新しい年が始動する。今年は、間違いなく”天下大乱”の年になりそうである。総選挙を通じて政権交代が起きるという、当たり前の民主主義国家になれるかどうか、試されているのだ。
 そうしたことを考えている年の初めに、痛烈な一撃が加わってきた。世界的な経済の波乱含みの動きが押し寄せてきたのだ。年明けのニューヨークの株式市場は、連日大きく株価が値下がり、他方で原油のほうもニューヨーク市場で、原油先物が1バーレル100$の大台を突破したことを受けて、日本の1月4日の東京証券市場の大発会では、一気に株価が一時は700円以上も値下がりをし、為替相場のほうも1$=107円台へと一気に5円以上も値上がりするにいたっている。言うまでもなく、アメリカのサブプライムローンを証券化した商品が、住宅価格の下落によって不良債権化し、金融機関に対する与信能力が大きく低下し始めてきた。それだけでなく、実体経済の悪化も雇用統計の悪化となって表れており、アメリカ経済の景気の悪化が進行し始めているのだ。
 日本経済も、輸出主導による景気対策を進めてきたために、アメリカの停滞は直ちに輸出の減退とともに、中国の対米輸出が落ち込むことも考慮すれば、今後の経済的なダメージは、相当に強まることを覚悟しなければなるまい。問題は今週からの東京市場の動きであるが、当分の間世界経済の混乱は、サブプライムローンの金融機関に対する損失の見極めがつくまでは続くものと見られ、その拡大如何では更なる損失の拡大となって、金融恐慌のような様相を示すこともありうる、と見なければなるまい。アメリカは、石油価格の高騰によってインフレの悪化となり、スタグフレーションという厄介な状態に突入することも予測されよう。また、円高というより、ドルの全面安という展開なのであり、ドルの信認すら懸念され始めている。当分の間、世界経済から目が離せなくなっている。

■世界で起きていることは15年前の日本の再来だ
 こんな状況は、ちょうど日本のバブルの破綻以降の金融危機を見ているようであり、アメリカも公的な税金ではなく、各金融機関からの奉加帳によって問題に対処しようとしている姿には、やや滑稽さを感ずるのは小生だけであろうか。幸い日本の金融機関に対する資金要請を、メガバンクは断ったという。当然の事であろう。なんとシテイは、中東の政府機関から1兆円近い資本注入を受けたといわれる。日本の大手メガバンクが、竹中大臣の下で1兆円近い資本増強を迫られたときに酷似している。まさに、歴史は繰り返すのだ。世界的な資金余剰のもと、バブルがいつどんな形で発生するのか、後になってみなければわからないともいわれているのだが、中国の株式市場はバブルに間違いないといわれ、北京オリンピック終了後、バブルの破綻後の経済・社会・政治危機の恐れがあると懸念されている。もちろん、経済は生き物であり、どんな形に展開するのかわからないのだが、いつまでも好況が続き続けることはありえないのだ。景気の後退こそが、資本主義の改革にとって必要なことでもあることを自覚しなければなるまい。

■道路特定財源問題について、議会の民主主義の技が問われている
 さて、政治のほうは1月11日までには給油新法の採決が行われ、参議院では、野党の多数でもって否決され、衆議院に送付され、3分の2の多数で採択されることになりそうである。そのことに対して民主党の菅代表代行は、6日のNHKテレビの放送の中で、参議院での内閣総理大臣に対する問責決議を出さない方向になることを示唆された。また、同じ番組の中で、自民党の伊吹幹事長は道路特定財源だけを取り出して、予算審議がなされる前に衆議院を通して、60日ルールでもって参議院が否決をしても、3分の2ルールを適用することはしない意向も打ち出されてきた。予算の審議も終わっていないのに、予算関連法案のうち、その一部分だけを通してしまうというのは、憲政の邪道以外の何者でもない。となると、いよいよ道路特定財源問題でのガチンコ対決になるのか、それとも議会制度の枠内で、各党が真剣に国民生活の立場から妥協ができないのか、それこそ議会制民主主義の技が問われることになるのだと思う。政権を目指すことは当然だとしても、そのことは国民生活がどのようになっても良い、というものでもあるまい。税制という国の形の根幹を巡る争いになるだけに、しっかりとした真剣な論戦ができるよう、参議院財政金融委員長として十分に努力していきたい。




line
1月4日(金)
 
 
■あけましておめでとうございます
今年もまた一週間に一回の予定でこのニュースレターを配信していく予定です。激動する日本の政局を中心に、できる限り本音の議論が展開できるように努力していきたいと考えていますので、どうぞご期待ください。又、いろいろと疑問などありましたら、どしどしメールを送っていただければ幸いでございます。
 さて、今年最初に取り上げたいのは、世界における日本の経済力の低下ということです。昨年12月、小宮隆太郎東大名誉教授(経産省系の研究機関である経済産業研究所の顧問)が同研究所のコラムに寄稿されているのを興味深く拝読した。テーマは「西北欧諸国と英国の経済的躍進」と題するもので、率直な問題が提示されているのだ。

■何故日本やドイツは経済的なポジションを低下させたのか
 その中で、1993年から2005年までのOECD各国24カ国の中で、一人当たり名目国民所得の推移を見たところ、93年はルクセンブルク、スイスに続いて日本が第3位、97年は第4位、01年は第5位、ところが05年には何と15位にまで落ち込んでいるのだ。さらに、93年から05年までの伸び率の順位を見ると、一人当たり名目国民総所得でみても、実質国民総所得で見ても、さらに一人当たり名目GDPで見ても、日本は加盟24カ国中最下位である。ほぼ同じ傾向を示しているのがドイツであり、かつて世界経済を牽引する機関車といわれた時代が懐かしく思えてくる。もちろん、失われた10年とも15年ともいわれたあのバブル経済後の経済停滞が思い出される。ドイツで言えば、東西ドイツの統合という難問題に直面したこともその要因の一つに上げられよう。もっと本質的な原因は、ものづくりの優位性を持っていたものの、輸出主導でもって経済を支えてきた国でもある。両国は、グローバル化のもとで製造業の空洞化が顕著に進展しつつあるのだという。とくにドイツでは、EU各国に国境が大きく開かれてきただけに深刻さが大きいといわれる。

■徹底した分権型社会に転換すべき日本 
さて、一方西北欧の小国であるアイルランド、アイスランド、フィンランド、ルクセンブルク、デンマークなどが大きく飛躍してきていることに注目が集まっている。これらの国々はマクロ経済のパーフォーマンス(成長・雇用・物価安定など)が優れているだけでなく、社会福祉・年金・医療・教育について、概して「大きな政府」の国であり、労使関係・環境問題・国民の政治参加・各種の国際貢献などでも優れた実績を誇っているのだ。そこで、小宮教授はアイルランドやアイスランドを見習うことはできないのか、として次のような提案をされている。すなわち、
 アイスランド、アイルランド、フィンランドの人口はそれぞれ、30万、424万、516万人であり、日本の地方と比べると、日本で人口が最も少ない県の鳥取県が約60万、四国が410万、北海道が568万人である。これらの地方に経済社会政策・教育などについてほぼ100%の独立性を与え、ただし外交・防衛などは引き続き中央の日本政府が権限・責任を持つこととしたとき鳥取県なり、四国なり、北海道はアイスランド、アイルランド、フィンランドと同様のことができないだろうか。
 まさに地方分権の徹底化であり、民主党が選挙で公約してきた姿なのだ。是非とも政権交代をして、その実現に向けて努力したいものだ。その際、小さな国であるがゆえに実現できていることがある。それは、透明度の高さであり、日本の場合、政治家の政治資金や政官財の癒着の問題など、情報公開や説明責任などの徹底的な改革が不可欠である。それなくして国民の政府に対する信頼は勝ち得られないのだ。

■現金給付よりも現物給付の充実を
 もう一つ注目すべき指摘を受けたのが、北海道大学の宮本太郎教授の指摘である。それは、北欧の国々の経済だけでなく、さまざまな点でのパーフォーマンスが優れているのは、現金給付の社会保障の充実よりも、医療・介護、保育、教育など現物給付の充実を進めたからではないか、という指摘である。現金給付を重視したドイツなど中欧よりも、現物給付を重視した北欧諸国の実践から日本はしっかりと学ばねばならないと思う。
 それにしても、日本の経済を見たときあまりにも円が安くなりすぎ、それが国民生活にとって問題を大きくし始めている。その背景には、異常な低金利を持続させてきた金融政策がある。一刻も早く金利の正常化に向けて努力していく必要がある。又、同時に世界的に見てドル価値も円以上に低下しており、外貨準備のすべてをアメリカの国債でもって運用している姿は、アメリカ人にとっても奇異に映っているようだ。






line