1月29日(月)
□格差問題に正面から立ち向かわない安倍総理 いよいよ国会が始まった。先週金曜日には安倍内閣の4閣僚による施政方針演説ほか財政、経済、外交演説が実施された。最初は衆議院で、次いで参議院と、一度で済ませたら、と言う声が強いのだが、そこは両院の独立性が強調され、関係大臣の皆さんには大変だろうが、まったく同じ演説を2回行っている。 安倍総理になって初めての施政方針演説であり、かなりの推敲を重ねたものだと言う。確かに言葉は踊っているし声も割合と大きいのだが、なんとなく迫力に欠けているし、例えば最低賃金の底上げだとかパート労働者への社会保険適用であるとか、かつて民主党が主張していた政策がいつの間にか取り入れられる一方、これから論戦の題材となる格差問題については「格差」と言う言葉が一度も使われないほどの徹底振りが目に付く。もちろん憲法や拉致問題などタカ派ぶりも相変わらずだ。 施政方針演説に対する代表質問が、今週の月曜日から始まる。民主党からは衆議院では小沢代表と松本政策調査会長が、参議院では輿石会長ほか2名のバッターがそれぞれ質問に立つ。小沢代表は久方ぶりの代表質問であるだけでなく、なんとも説明がつかない事務所費問題で佐田国務大臣が昨年末辞任したのだが、代表自身の事務所費問題とされている件についても質問の中で自ら解明されることになっている。参議院の副議長の問題といい、何とか国会の論戦が本格化する前に、国民が理解できるよう、けじめがつけられるよう強く求めたい。
□「上げ潮政策」の甘い予測に幻惑されてはならない さて、今度の通常国会で一番追及していくのは「格差問題」なのだが、来年度以降の予算やその前提となっている経済財政政策についてもしっかりとした論戦を挑んでいく必要がある。いわゆる「上げ潮政策」といわれるもので、昨年7月に経済財政諮問会議で確認された「歳入歳出一体改革」が策定され、そこでは2011年までに基礎的財政収支を黒字にするためには、16,5兆円財源不足があると想定し、このうち最大で14,3兆円分を歳出削減でまかない、足りない分を消費税の引き上げでまかなおうとしてきた。その前提として、高い経済成長を目指すべきだ、として名目GDP成長率を4%にまで高めるべきだ、と言う中川秀直幹事長や竹中前大臣らと、与謝野、谷垣前大臣らはもっと安定的な成長を前提に不足する分はきちんと増税すべきだ、と言う対立になり両方のケースについて将来見通しを策定していくことで決着してきた。 ところが、06年度の税収が予測よりも7兆円ちかく大幅に増えることとなり、「このまま景気が順調に進めば増税なしでも基礎的財政収支が黒字になるのでは」と言う声すら上がる始末であった。問題は、この7兆円もの税収増がどのような要因によって生まれたのか、と言うことである。その前に、大体当初予算を編成するときの税収見積もりが、あまりにも杜撰であったのでは、と言う疑問が残る。その点は別にして、7兆円のうち半分の3,5兆円は税収の増加であるが、そのうち定率減税の廃止によるものが1兆円近くあり残りは法人税増収が大部分である。残る3,5兆円は歳出の削減と言う。
□イノベーションは経済界を優遇することでは生まれないのでは この大幅な税収増加の元で、来年度の予算編成では国債発行の削減や地方交付税赤字分53兆円のうち国の負担分19兆円の削減に回されたのだが、「上げ潮路線」派は、とにかく経済成長を高めることで財政再建を軌道に乗せようと、なんでもかんでも経済成長を高めるよう全力をあげるべきことを施政方針演説に盛り込んでいる。考えてみるべきは、経済が成長するためには中長期的にはイノベーションが必要であるが、どうしたらイノベーションがおきるのかはブラックボックスだと言われている。イノベーションの必要性を力説したシュンペーターの『経済発展の理論』を読んでも、法人税の引き下げなど、為政者が経済界を優遇すれば簡単におきるなどありえないのであり、かえって優遇された環境ではおきにくいのではないかとも思えるのだが、施政方針には成長と言う言葉が踊っている。 それよりも怖いのは、安易な設備投資の拡大を低金利と過剰流動性の元で低成長部門にまで拡大すれば、かつてのバブルの再来となって再び日本経済を塗炭の苦しみに落とす恐れが出てくるのでは、と言う点である。日銀の金利政策を正常化させない政治的圧力を厳しく批判し、再びバブルを招かないよう安倍内閣のいわゆる「上げ潮政策」に強い警戒の声を発するときなのだ。
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