2005年12月の日記:[以前の日記]
 
 
12月26日(月)
 
 
第548号 2005年12月26日

□ショックだった、9.11総選挙の敗北
 早いもので2005年も終わろうとしている。「ニュースレター」も今年これが最後の号となる。今年の一番の思い出は、やはり9月11日の衆議院選挙に尽きているように思われる。
まさか、と思われる郵政民営化法案の参議院での否決によって解散・総選挙に突入したとき、分裂選挙になったときの自民党の強さに警戒心を持っていたのだが、それ以上に小泉劇場と化した政治のアリーナで刺客騒動によって、すっかり国民の関心が小泉対抵抗勢力という構図にもちこまれ、民主党の「日本をあきらめない」という主張や「郵政以外に多くの課題がある」として2年前に提起したマニフェスト選挙に持ち込もうとしても、残念ながら国民の民主党への大きな支持を獲得することができず、大敗してしまった。とくに、東京、神奈川、千葉、埼玉といった人口が集中している大都市部での惨敗が強烈なインパクトを持って民主党を襲った。ちょうどアメリカ本土を襲ったハリケーンと同じようなものではなかったか、として「9.11ハリケーン」と表現した政治家もいたように記憶している。想えば1996年に民主党を結党して以来、新進党の分解で民主党が野党第1党になり、自由党の合流があったのだが、この間の民主党は衆議院選挙であれ、参議院選挙であれ議席を減らしたことは一度たりともなかったのだ。
それだけに、今回の選挙での敗北は身にこたえている。やや鬱状態の気分に襲われることもある。いったいこれまでの努力は何だったのだろうか、と。小泉総理の下での4年半、パフォーマンスだけの政治だとか、ワードポリティックスだとか批判をしてきたことがむなしくなってしまう。でも、これまでが順調に来すぎていたのではなかったか、と反省してみることで今後の政権交代に向けて再び努力をしていかねば、と思う今日この頃である。想えば「変人」といわれた小泉首相が出てきたこと自体、民主党がこのままいけば政権をとるのではないか、という恐怖心が自民党に改革を進めざるを得ない原動力になったのであり、今度は民主党が自らに足らざるところをしっかりと学習していく必要がある、ということなのだと思う。2480万票という獲得できた票数は2大政党を担うに足る得票であり、小選挙区制度のマジックで議席が大きく差がついているにすぎないのである。

□前原代表に、あえて考えて欲しいこと
 さて、民主党の前原体制である。前回も取り上げたテーマであるが、気になることが二つある。一つはいわゆる対案路線である。もちろん、すべての案件に対して対案を作るとおっしゃってはいない。問題は政権に挑戦する野党とは何なのか、という点についての民主党としての共通した理解を確立する必要があるのではないか、という点であり、野党第1党の任務は、政権政党の出す政策についての問題点の追及こそが中心的な任務であり、選挙においてはもちろんマニフェストの公約を作る必要があることは言うまでもないのだが、政策としてはまさに骨太なもので、精密なものは官僚機構を持っている政権政党に太刀打ちできないのだと思う。アイディアとして政権政党が出しえていない、たとえば「高速道路の無料化」といったものがあれば、それを打ち出していく必要もあろう。何せ、マスコミの取り上げ方については選挙の時はいざ知らず、平時はほとんど対等に取り上げてくれないのが現実なのである。
もう一つは、公務員の人件費の削減問題である。もちろんこの方針がマニフェストに書かれた公約だったことを知っているし、選挙戦で公務員の人件費の削減に触れなければ国民の民主党を見る目も厳しくなっていたことは言うまでもない。ただ、冷静に考えてみるとき、小さな政府競争にしない、という方針であれば必要性が薄れた仕事に従事している公務員職場は減らしても、とくに地方自治体での教育・医療・福祉などのサービス分野の充実には公務員の職場として確保していく必要があるのではないのか、と思う。この点について、もちろんNPOやボランティアの方たちの共同作業も考える必要があることはいうまでもない。そのことも含めていかなる制度にすべきなのか、その中で公務員のあり方が決まるのではないだろうか。もちろん、財政再建に少し協力してもらうべく賃金の削減も求める必要があるのだが、3年で20%の削減というのは実現可能かどうか、公務員組合の出身だからそう主張しているのではなく、中長期的に見たとき公務員制度がモラールやモラルを保持し続けられるかどうか、が重要なのではなかろうか。
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12月19日(月)
 
 
第547号 2005年12月19日

□注目された民主党大会の前原代表発言
 先週の16〜17日、民主党の定期大会が開催された。総選挙での敗北を受け、岡田体制から前原新体制になって初めての大会であり、とくに7〜14日に前原代表がアメリカと中国を訪問され、アメリカのシンクタンクであるCSIS(戦略研究所)で講演された「民主党の目指す国家像と外交ビジョン」について、集団的自衛権の行使を含む憲法改正問題やシーレーン防衛への自衛隊の参加、さらには中国脅威論など、事前に聞かされていなかった民主党の国会議員関係者の戸惑いや批判が予想されたことや、小泉首相や自民党関係者から「大連立」の呼びかけも出されていたことに対して、前原代表が「99.99%ない」と発言されたことに対して「なぜ100%と言わないのか、0.01%はある」ということなのか、という批判が出されていただけに注目された大会となった。
大会の前日に開催された全代議員会議のなかで、約3時間半に及ぶ質疑が交わされ、前原発言に対する質疑も多く出され、それに対して代表から答弁がなされた。
前原代表の発言は、その後、原稿がメールで配信されており、内容の全貌が明確になったのであるが、当日の答弁に際して、これまで鳩山、菅、岡田代表が海外で発表されたときの例に倣い、まだ民主党の方針として確定しないものでも自らの判断で考え方について提起されており、たとえば民主党の憲法提言において、未だ確定していないが「制限された自衛権」の保持を打ち出していることなどを踏まえつつ、一歩踏み込んでいることは認め、今後の党内論議の中でしっかりと論議をして欲しい旨の答弁であった。
また、中国脅威論については講演内容を読む限りは軍事力拡大についての懸念の表明であり、「脅威」という表現よりも「懸念」とすべきではなかったか、と思われる内容で、全体としては中国とアメリカも含めたアジア地域の安全保障やFTAの締結などを提起しており、バランスの取れた落ち着いた内容になっていたように思える。むしろ、日米同盟のあり方について、アメリカに対しても率直に日本の国益を踏まえた主体的な外交路線を打ち出していることのほうが注目される。イラク攻撃に対する民主党の批判的立場や日本の主権国家としての基地や空域の管理を日本側に移すべきこと、さらに日米間の認識ギャップに対する率直な懸念の表明など、アメリカに対しても言うべきことをきちんと主張しているのである。

□堂々たる論戦を交わすべきである
 もちろん、これらの答弁に対して納得できない代議員もいたことは事実である。小生自身も「中国脅威論」については、先に述べたように「脅威」というより「懸念」という程度のものでなかったのか、また、これから訪問する国に対する一定の配慮をしても良かったのではないか、と思っている。
また、憲法改正問題については菅代表の時代に06年中には改正案を出すという方針があったものの、06年にこだわらなくても良いのであれば、憲法改正の時期については、もっと時間をかけるべきであり、党内のさまざまな論議をこれから集約していくべきだと思う。前原代表は、民主党の弱点は、国家像や安全保障観の不統一にあることを認められ、今後、その統一に向けてしっかりと論議をして確立していきたいと言明された。冷戦と55年体制が終焉した今、堂々と論議をし、民主党のビジョンを確立していく必要がある。
 その点では、翌日の17日の大会での前原代表の挨拶のほうが注目される。問題は内政であり、自民党小泉政権に対して「小さな政府」の競いあいではない「本物の改革」を打ち出していくことを表明され、財政の無駄を徹底的に追求していくため、次の5項目の課題を打ち出している。@特別会計の改革、A公共事業改革、B公務員制度改革、C分権改革、D省庁再編。そのなかでもとくに「分権改革」こそが改革の本丸であり、民主党の目指すべき国家像に連なるものと位置づけられている。人口30万人程度の基礎的自治体に政令市以上の権限を付与し、緩やかな道州制を打ち出されている。さらに、最近の建築確認問題や幼児刺殺事件、さらには二極化しつつある日本社会の現状についてもセーフティネットをしっかり張り、官の責任放棄・民の倫理欠如・政治の無責任さにメスを入れていくことを強調されていた。今後の課題は大きく重い。
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12月12日(月)
 
 
第546号 2005年12月12日

□初めてのフィリピン行き、ODA視察に
 先週は、5日から9日まで初めてフィリピンに出向いた。目的はODAの視察であったが、実はフィリピンには元財務官であり、財務省時代によく議論させていただいたアジア開発銀行の総裁である黒田東彦さんが居るし、フィリピン大使が大学時代の同級生の山崎隆一郎さんなので、ぜひ一度お会いして黒田さんからはアジアの開発金融の問題だけでなく、彼の持論である将来のアジア共通経済圏構想や、EUの共通通貨であるユーロの前進であるECUのアジア版であるACU構想などについて懇談をしたいと思い、マニラを訪れた次第である。山崎大使からは、フィリピンにおけるODAがどのような実態にあるのか、また、国際協力銀行の見直し問題もあり、現地での実態について率直にご意見を伺いたいと思い、思い切って出向いたわけである。さらに、国際協力銀行の現地の方にお願いして、ODAの現場に出向き、現地の方たちからどのような評価をされているのか、また現地で国際協力活動をされている日本人の方たちの声を聞きたい、と考え、6日火曜日一日かけて、農業構造改善、火力発電施設、港湾建設、高速道路建設を見せていただいた。それぞれ日本の方たちは、全力でフィリピンの発展のためになるよう努力されているのであるが、いかんせん主としてフィリピン側の問題によってうまく機能していないことも教えられた。

□公務員制度や政府のガバナンスの重要性を痛感
 フィリピン側の問題についてはすべて理解できたわけではないのであるが、現地の方たちの声を聞く限り、公務員制度や政府のガバナンスの欠如が大きいことを痛感させられた。というのも、公務員の給与水準が民間に比較しても、また生活水準から見てもかなり低いため、公務員がサイドビジネスに走るため、なかなか効率よく仕事が進まないことや、国会議員には一人一人に国家予算の一部が割り振られ、それを自分の好きなところに使ってもよい、といった仕組みが残っており、ただでさえ足りない財政を非効率な使い方を残していることがあげられよう。そのため、かつては東南アジアの雄といわれたほど経済的なポジションが高かったフィリピンが、今ではシンガポールやマレーシアといったところに追い抜かれ、国民一人当たりGDPが1000$前後で推移しているのが実態である。また、貧富の格差も大変に大きいという。マニラの市内は道路が渋滞しているにもかかわらず、なかなか交通網が整備されないことを実感させられた。日本では公務員バッシングが続いているのだが、フィリピンの現状を見るにつけ公務員制度や政府機構のガバナンスがきちんとしなければ、国民生活がうまく機能しないのであり、短絡的な公務員たたきが、中長期的には悪影響をもたらすことを見失ってはならないのだ。もちろん日本の公務員制度には天下りやセクショナリズムなど、大きな問題があることは間違いないのであり、改革すべき点が多いことは間違いないのではあるが・・・。

□どうなっているのか、幼女連続殺人事件
 気温が30度近くになるフィリピンから、成田を経由して札幌まで帰ってみたら一面の積雪であり、氷点下の世界であった。あらためて熱帯から亜寒帯まで、約5時間で移動することができるのだが、人間の適応能力にも感心させられる。時差が1時間しかないので、そのぶん楽ではある。日本に帰ってみると小学生に対する殺人事件が3件連続して発生しており、なにか取り付かれたように同じような問題が発生することに不気味さを隠せない昨今である。こうした犯罪が多発する原因はどこにあるのか、どうしたら防ぐことができるのか、真剣に対応していく必要がある。

□民主的な党運営が欲しい、前原代表の外交ビジョン発表
 さて、前原代表がアメリカに出向き、そこで外交ビジョンなるものを発表され、一斉に取り上げられている。中身については新聞でしか知りえないのであるが、中国に対する脅威としての認識や、1000海里シーレーンに日本の自衛隊も協力すべきこと、さらに持論である憲法の改正によって集団的自衛権の明確化などが述べられているという。中身に対して論評する以前に、こうした重要な外交ビジョンが突然アメリカで公表されるというやり方について納得できにくい。少なくても「次の内閣」に骨格ぐらいは提示し、その上で対外発表される必要があろう。こうした党運営のあり方の改革が必要なのではなかろうか。16〜17日は民主党の党大会である。いろいろと問題が出されそうな大会になりそうであり、心配である。
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12月5日(月)
 
 
第545号 2005年12月5日

□世界はインフレに対して懸念を持ち始めている
 早いもので、もう師走である。経済のほうに目をやると、ようやく明るい兆しが広がり始めてきている。このところ株式市場が活況を呈し、東京市場の日経平均株価が1万5千円の大台にまで上昇し、この勢いではさらに上昇していくのではないかと予想されている。その背景には、もちろん日本経済がようやく景気の踊り場を脱却し、GDPが年率で2〜3%の実質成長を遂げており、輸出が好調な自動車、鉄鋼、海運など史上最高の経常利益が株価の上昇を牽引していることは間違いない。この点での不安材料なのがやはり中国やアメリカという巨大なマーケットが今後どうなっていくのか、ということにかかってくる。とくに原油の値上がりが経済の足を引っ張り、成長が鈍化するのではないかと見られており、今後の展開から目を離せない。12月2〜3日にかけてロンドンで開催されたG7の会合でも、デフレよりもこれからは金利の上昇を中心にしたインフレに対する警戒感が打ち出されている。その背景には日本の株式市場に流れ込んでいる巨額な過剰流動性があるわけで、株価だけではなく、当然、土地や金などの資産価格の動向に注意を怠ってはならないことはいうまでもない。

□日銀は独立性を死守すべきだ
 こうしたなかで、日銀と政府との間で金融政策をめぐって激しいバトルが静かに繰り広げられている。それは、日銀が10月に公表した物価の展望のなかで、来年以降に消費者物価指数がマイナスからゼロ以上に上昇すると見込んでおり、福井総裁はこのところゼロ金利政策の出口を模索する発言を慎重な言い回しながら繰り返してきている。これに対して政府・自民党筋はゼロ金利からの出口に対して、まだそれを解除できる条件にないことを強調し、政府の方針(何時どのように決まったのか?)に反してまで解除の方向を打ち出すのなら、「日銀法の改正が必要になる」などと脅しあげている。かつて公定歩合の引き下げをめぐって金丸副総裁が「日銀総裁の首を取れ」と発言したことを髣髴させる。竹中総務大臣にいたっては消費者物価指数のとり方やGDPデフレーターを取るべきだ、と主張するにいたっている。ゼロ金利政策を進めていくときのルール以外の基準を持ち出してくるとは、いささか常軌を逸しているといわなければなるまい。かつてバブルを発生させたとき、日銀が金利を上げようとした際、財務省を中心にした圧力で異常な低金利が続いたことが地価や株価のバブルにいたった経験を忘れることができない。日銀は物価の安定を中心に正しいと信ずる金融政策を貫くべきである。

□財政再建の前提はやはりデフレからの脱却を
 小泉政権の中でコップの中の小さな論争が起きてきた。それは、消費税の増税と歳出削減の同時並行的な改革を主張する谷垣財務大臣・与謝野経済財政担当大臣と歳出削減を先行させるべきだ、とする中川政調会長・竹中総務大臣といった小泉総理の直系に連なるグループ間の意見の対立である。その論争はさらにエスカレートし、2〜3%のインフレを求める中川政調会長に対して、インフレに財政再建の解決を求めるのは悪魔のやり方でやるべきでない、というところにまで発展してきている。やはりここでもデフレからの脱却を優先するか、それとも正面から消費税の負担増を追求するのか、の対立となっている。小泉首相は谷垣・与謝野両大臣を「調子はずれ」と批判しており、いまのところ収まりつつあるのかもしれないが、案外、経済政策をめぐる対立は根深いのかもしれない。私は、デフレからの脱却が財政再建の前提になると考えている一人であり、その前に増税や負担増はやるべきではない。

□規制緩和された後はどうなっているのか
 それにしても、広島県の小学校の幼女殺害事件に引き続き、また同じような犯罪が起こってしまった。日本の社会が世界でも一番安心できる社会である、といわれたのがうそのような昨今である。そのことは建築設計確認問題でのあまりにもずさんな出来事に怒りを関することとあいまって、国民の安心・安全をないがしろにしてきた安易な規制緩和路線にも反省を迫るものがあると思う。官なら良いというのではなく、規制緩和する前提には、緩和以降の監視監督機能が十分に張り巡らさなければならないのだ。
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